旅する人々 ー日本をちょこちょことー

自分たちの旅の様子や海外からの友人たちの旅を紹介しています。

東福寺と光明院の秋(京都)

越前福井の旅を終え、福井駅で列車を待っている。

大阪行き特急サンダーバード14号に乗った。京都までは約1時間20分である。12月7日正午前に到着した。京都駅の人の多さは福井とはまるで違う。名高い京都の紅葉を一度は見てみたかった。とはいえ、普通に考えればこの時期紅葉はほぼ散り終え、すでに冬の装いに入っていてもおかしくない。実際福井では紅葉はほぼ見られなかった。京都の紅葉最盛期は11月下旬という。仕事の都合上この時期になってしまった。

ともあれ京都駅で奈良線に乗り換え、東福寺駅へ向かった。駅を降り線路沿いに商店街を南下し、やがて東に折れると東福寺の寺域に入った。

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東福寺に向かう途中で

お国自慢になってしまうが、日本の紅葉は世界でも最も美しいものの一つとされているらしい。いくつか理由がある。紅葉するのは落葉樹に限られるが、地球上でも東アジア・中央及び西ヨーロッパ・北アメリカ東部、中東などにしかないそうである。また日本では紅葉する樹木の種類そのものが多く、たとえば紅葉を代表する楓の種類ではヨーロッパとアメリカが13種類であるのに対し、日本では2倍の26ある。さらに欧米の紅葉が主に黄色に変色するのに対して、日本の紅葉は黄色だけでなく、赤く変色するものも多い。同じ赤でも樹木の種類によって微妙に異なるために複雑な色合いを醸す。また日本は四季の区別が明確で、夏と秋の温度差の激しさ、秋に入ってからも一日の寒暖の差が大きいために、冴えた鮮やかな色彩を放つ。加えて日本には常緑樹や苔の緑色、枯れ葉の茶色などが混じってとくに複雑な色彩となる。これらの多くの要因が日本の紅葉を世界的なものにしているらしい。

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東福寺 臥雲橋から日下門までの路

日下門から東福寺に入り、通天橋に行く。東福寺は京都五山の第四位、1236年の創建で禅寺としてはかなり古い部類に入る。もともとは純粋禅でなく、初期においては伝統仏教の一部として禅を伝えている。最初に寺を開き、住職一世となった(開山という)円爾弁円(1202-1280)は静岡県の人で、最初天台宗を学ぶが、のち禅宗に関心を寄せ、鎌倉寿福寺などでの修行を経た後、1235年中国に渡り中国五山の第一の禅寺万寿寺にて無準師範の法を継いでいる。帰国後は博多で承天寺を開き禅宗を広めたが、やがて天台宗による迫害を受け、東福寺の開山に迎えられた。東福寺では禅のみではなく、伝統仏教と抱き合わせたことが東福寺の発展につながったのかもしれない。政治的妥協といってしまえばそれまでだが、妥協することによってたとえ遠回りになったとしても禅宗が根付く道を選ぶべきだと考えたのかもしれない。

寺院の広大さは鎌倉の小ぢんまりとした寺院に慣れ親しんできたわたしとしては、いささか戸惑いを感じないではなかったが、広大といっても権力と結合した嫌味があるわけでもなく、無限の広がりを見せる紅葉の荘厳さにはただ見とれるほかはなかった。

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通天橋にて撮影

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通天橋にて撮影

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東福寺方丈庭園 重森三玲作(1938)

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東福寺方丈庭園 重森三玲作(1938)

東福寺方丈庭園を見学したあと寺内を南下し、三門の前を通り過ぎて六波羅門を出た。六波羅門を出て少しゆくと光明院という塔頭がある。塔頭というのは祖師や、或いは高僧などが死去したのち、彼らを慕って寄り添うように建てられた小院のことで、寺の中にあったり、寺の外のすぐ近くに建てられていたりする。光明院も東福寺の数多い塔頭のうちの一つである。東福寺に限らず、塔頭の多くは非公開とされ、あるいは特別拝観という形で限定的に公開しているのが通例である。光明院の場合は通年公開されているらしい。京都の禅寺を巡る楽しみは、このような一般的にはあまり知られていない小さな塔頭を拝観することだと思う。塔頭に関心をもっている観光客はまだまだ少数派で、おそらく多くの観光客は大寺院の大伽藍や方丈庭園を見終わった時点で次の大寺院へと流れてゆくだろう。

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光明院 東福寺塔頭

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光明院 東福寺塔頭

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光明院 東福寺塔頭

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光明院 東福寺塔頭